椎骨動脈解離(脳動脈解離)

椎骨動脈解離とは

椎骨動脈解離とは首の血管が裂けたり、剥がれる病気です。

血管が裂けることにより偽腔と呼ばれる、本来とは異なる血の通り道が出来るのです。
偽腔の説明

偽腔は重大脳疾患を起こす原因となります。


椎骨動脈解離でリスクが高まる重大脳疾患

  1. 脳梗塞=血管の詰まり
  2. くも膜下出血=血管の破裂
  3. 動脈瘤=血管のこぶ

椎骨動脈の説明

椎骨動脈は逆Yの字状に首の左右に一本ずつあります。椎骨動脈解離の場合、解離を起こした側だけが痛むケースが多いですよく見られる初期症状は後頭部やうなじの強い痛みです。一週間、あるいはそれ以上の期間強い頭痛が続きます。

~注意喚起~

椎骨動脈解離は見落とされがちな疾患です。発症率は10万人に1~3人と言われていますが、当院ではこの数値が実態と異なると考えています。

当院では、直近1年間で20人以上見つけています。これは異常に高い発見率です。当院でばかり見つかる理由はこちらをご覧ください。

症状

  • 後頭部の頭痛
  • 首(うなじ)の痛み
  • 左右どちらかの痛み

椎骨動脈解離は40代から50代が一番起こりやすいです。ですが、若い方にも起こります。

特徴は左右片側だけの痛みである事です。痛みは通常の頭痛よりも強く、長期間痛みが続きます。この病気の場合、初期症状にも違いはなく、同様に後頭部の頭痛や、首の痛みが起こります。

わかりやすくハッキリとした症状が特徴ですが、実は誤診や見逃しが多いです。偏頭痛や寝違えと誤診される事がよくあります。理由は後述します。

よくある症状
  • 痛みが強い
  • 痛みで目が覚める
  • 薬が効かない(薬が切れてくると痛い)
  • 何日も症状が続いている

簡易フローチャート
解離フローチャート


椎骨動脈解離の実例

赤丸内、向かって左側の椎骨動脈に狭まり、膨らみの所見あり
解離画像1

左:発症直後 右:半年後
解離画像2

自然修復により、減っていた血の流れが回復します。形は完全に戻らない場合もありますが、この方は綺麗に治りました。

原因

椎骨動脈解離は首に強い負担が掛かると起こりやすいです。

原因の一例

・整体/カイロ/マッサージ/シャンプー
・首をぶつける
・首を激しく動かすスポーツ
・首に衝撃がくるアトラクション
・交通事故

無理な負荷は解離を引き起こします。過度のマラソンによる症例は度々見ます。また意外なスポーツではゴルフでなる方がいらっしゃいます。ジェットコースターが引き金になるケースもあります。

実例紹介:ジェットコースターで解離に…
参考記事:解離とアトラクション・体感型映画…

尚、必ずそれらしい原因があるとは限りません思い当たる節がない場合もあります。

検査

検査方法はMRI撮影、CT撮影です。但し、CTは造影剤の使用が必要です。よって解離の検査はMRI撮影が推奨されます。造影剤を使わずに血管を映し出せるからです。

ですが、ただMRI検査を受けるだけでは解離は見つかりません。首のMRA検査も行う必要があるからです。

こちらはMRA画像です。椎骨動脈の血管を映したものです。赤丸部分に解離が起こっています。
解離画像3

誤診、見逃しが多い理由

椎骨動脈解離は誤診や見逃しが多い病気です。その理由は二つあります。

一つはレントゲンでは診断ができないからです。首の痛みがある場合は整形外科に行かれるでしょう。そうなると、通常は骨の異常がないかをレントゲンで確認します。

そこで異常がなければ、寝違えで筋を痛めたとか、姿勢の悪さからくるコリや血行不良という診断が下されます。場合によってはレントゲンがCTになりますが、通常の造影剤無しのCTでは判断できません。

実はこの流れでは重要な事を確認していません。それは椎骨動脈解離の疑いです。この病気を見つけるには『血管の撮影ができる検査』が必要です。その為、MRIでの検査が必要なのです。

MRI検査


ここで二つ目の理由が出てきます。椎骨動脈解離はただMRI受けるだけでは見つかりません

つまり、頭痛で脳神経外科を受診しても見逃しが起こります。その理由は、頭痛撮影の通常工程に椎骨動脈の血管撮影を含まないクリニックが多いからです。

椎骨動脈解離を見つけるには、下記の条件を全て満たす必要があります。

  1. 医師が椎骨動脈解離の疑いがあると判断する

  2. MRA撮影と呼ばれる血管撮影を実施する

  3. MRAは脳だけでなく首も撮る必要がある

当院では後頭部の痛みがある患者様を慎重に確認します。BB法と呼ばれる撮影法を併用して撮るケースもあります。血管MRAでハッキリわかる症例なら良いですが、実際には血管MRA単体では判断が難しい場合があります。

BB法チェックの実例
BB法画像

BB法は血管を断面状に細かく映し出せます。出血している部分がないかをチェックします。赤丸部分が白くなっていますが、これは出血がある事を示しています。つまり、椎骨動脈解離である事の裏付けになります。

誤診・見逃しのリスク

椎骨動脈解離は注意して経過を診ていく病気です。誤診や見逃しが起こる事は、非常に良くないです。

なぜなら、椎骨動脈解離は危険な頭の病気に繋がるリスクが大きいからです。解離だけで済めば頭痛は徐々に治まり、解離した部分が自然治癒していきます。しかし、その一方で脳梗塞やくも膜下出血に繋がる事があります。

椎骨動脈解離のその後

  • 1.自然治癒により回復する
  • 2.血管が詰まり脳梗塞を発症する
  • 3.血管が破れくも膜下出血を発症する

脳梗塞やくも膜下出血は命の危険を伴う病気です。可能な限りその発症リスクを下げるべきです。例えば血管が詰まる可能性が高ければ抗血小板薬を飲む事で、脳梗塞のリスクを下げる事ができます。しかし、これは椎骨動脈解離を見つける事が前提です。

ですから、どの程度・どのように解離しているかを診てもらう事が大切なのです。解離は現代医療で軽視されがちですが、もっとしっかりと精査し発見していくべきです。

どこで診てもらうか

泉山先生

MRIがある、解離に強いクリニックへ行く』が答えです。ですが、この基準で探すことは難しいと思います。どの程度椎骨動脈解離に理解があり、どうMRI撮影を行うかは公開情報ではないからです。

MRI撮影には通常この工程で撮るというルーティーンがあります。ですが、これは患者様の症状に合わせて撮影方法を追加したり、変更する必要があります。例えば、椎骨動脈解離疑いなら血管MRA、聴神経腫瘍疑いならCISS法というようにです。

しかし、現実は柔軟な対応が出来るクリニックばかりではないです。何故なら、他院でMRIを受けた方が当院へ来て、解離が見つかるケースがよくあるからです。当院で見つかる解離患者様のうち、5~6人に1人はこのパターンです。

~椎骨動脈解離のまとめ~

椎骨動脈解離は症状がハッキリしています。

  1. 後頭部の頭痛
  2. 首の痛み
  3. 左右どちらかの痛み

一つでも当てはまる場合椎骨動脈解離の疑いを持ってください

どこで行けば良いかわからない場合は、当院で検査を承ります。問診票に椎骨動脈解離疑いと書いてくだされば、しっかりと精査させていただきます。

当院では直近1年間で20人以上見つかっています

2024年、当院を受診される解離疑いの患者様の直近50人を調べたところ、20%の方に椎骨動脈解離が見つかりました。あり得ないと驚く医師もいるでしょう。ですが、これが事実です。

自覚症状のある方は速やかに検査を受けて、診てもらってください。

よくある当院へのご質問

Q.最短でいつ検査ができますか?
当日枠に空きがあれば、その日に検査が可能です。

Q.どれぐらい時間が掛かりますか?
患者様の滞在時間は平均で2時間、混雑時で3時間程度です。状況により変動はありますので、目安としてお考えください。

Q.いくら掛かりますか?
3割負担で初診の方の場合、MRI検査込みで約8,500円です。追加検査を行う場合は概ね10,000円~15,000円です。

Q.何回通う必要がありますか?
一回きりのご来院で大丈夫です。当院が1度で診察、MRI撮影、結果説明の全てを行う方針だからです。
※懸念事項があった場合、椎骨動脈解離が見つかった場合は例外です。

Q.予約制ですか?
予約制です。ご来院前にお電話にてご予約下さい。

即日の検査、結果説明

「思い立ったらすぐ検査」が可能

当院ではMRI希望の方は、初診でもご予約を承っております。そのため、当日のご予約、当日のご来院が可能です。もし当日枠が埋まっていても、殆どの場合翌日には検査が可能です。
ご来院の際は、事前にお電話にてお問い合わせください。
電話番号:045-482-3800

当院からのご提案:朝一番でのご予約をお勧めします。混雑時の滞在時間は平均3時間程度ですが、朝一で来る患者様は1時間半ほどでお帰りになられます。
通常の時間帯より早く終わるのでお勧めです。ご希望の方は、お電話にて「朝一で予約したい。」とお申し付けください。

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記事監修

院長 泉山 仁

・横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 院長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本脳卒中学会専門医

平成27年 市が尾カリヨン病院 病院長
平成29年 青葉さわい病院 副院長
令和元年 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 開業

 
 
横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科

田園都市線藤が丘駅より徒歩8分、青葉台駅より徒歩13分
診療:要予約制 診療日:月~木曜日、土曜日

初診でMRI希望の方は事前にお電話にてご予約ください。
当日のご予約も可能です。
 
混雑時はお電話に出られない場合があります。 お手数ですが、数分後にお掛け直しください。

電話番号:045-482-3800

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