一般に椎骨動脈解離は非常に稀な病気と考えられており、その発症率は10万人に1~3人と言われています。当院のような普通のクリニックでは殆ど見つかりません。椎骨動脈解離が見つかるのは年間に1人、2人という脳神経外科クリニックさんも多いと思います。
ですが、当院は8カ月で12人の椎骨動脈解離を見つけました。大きな病院へ送った際には「よく見つけましたね」、「本当に多く見つけますね」というお返事をいただく事もあります。それだけ高い頻度で見つけています。そこで本日はなぜ当院でばかり見つかるのか?という疑問にお答えしていきます。
椎骨動脈解離とは?
首を通る血管の膜が裂けたり、剥がれてしまう病気です。椎骨動脈は首の左右に一本ずつあり、解離を起こした側だけが痛むケースが多いです。よく見られる初期症状はうなじや後頭部の痛みです。痛みは強い傾向にあります。
代表的な症状
- 後頭部の頭痛
- 首(うなじ)の痛み
- 左右どちらかの痛み
まずは他のクリニックであまり見つからない理由を書いていきます。
椎骨動脈解離が見つかりにくい理由
- 椎骨動脈解離は稀な疾患だという認識がある
→真っ先に病気の候補に考えるお医者様が少ない
→発症率が低いため調べても無駄になる事が多いと思われている
- 後頭部に強烈な頭痛が起こると考えられている
→正解ではあるが、全員に強い頭痛が起こるわけではない
→頭痛が起こらない人もいるという認識が欠けている場合がある
- 椎骨疑いの確認には検査方法を追加する必要がある
→検査の時間が増えると待っている方の時間が押すため特殊な工程を避けたがる
→医師の指示がない場合、画像に違和感を感じても追加検査をしない事がある
このような理由から、クリニックではあまり見つからないという実態があります。しかし、当院では10万人に1~3人という発症率自体に疑問を持ち、椎骨動脈解離の可能性を積極的に探りました。すると、最初の4か月で5人も見つかったのです。当院が特別に患者数が多いという事はありません。この4カ月に特別な患者様を集めたという事もありません。その後も継続したところ、8か月で12人を発見するに至りました。
これは常識的には考えられない人数であり、偶然の域を超えています。最初から椎骨の可能性を考えるお医者様が少ないこと、発症率のデータと実態が異なるとこと。この二点が証明されたようなものだと考えます。発症率に関しては公表されている数値の数倍~数十倍いてもおかしくありません。この病気は気付かれる事なく自然治癒に至るケースも多々あるのだと思います。しかし、自然治癒する方がいる一方で、大変な事態に繋がる方もおられます。
当院がこの病気に警鐘を鳴らす理由
実は椎骨動脈解離は死に至る可能性がある病気なのです。だからこそ、軽視すべきではないのです。
椎骨動脈解離を発症した場合、その後の流れは以下のいずれかとなります。
1.自然治癒により回復する
2.血管が詰まり脳梗塞を発症する
3.血管が破れくも膜下出血を発症する
ここで2、3のルートを辿ると命の危険があるのです。この話を聞けば、「なぜ軽視している人ばかりなのか!!」と怒る方もいると思います。ですが、お医者様は悪くありません。そうなる原因は発症率が低いというデータがあるからです。稀な疾患だという認識があるのです。
繰り返しますが、椎骨動脈解離は見つかっていない人が多いだけで、実際の発症率はもっと高いと考えられます。検査で椎骨動脈解離が見つかれば、脳疾患を発症するリスクを大幅に下げられます。まず、首に絶対負担を掛けてはいけないという事を自覚させます。建物で言うなら崩れかけている状態です。負荷を掛ければ通常の建物とは比べ物にならないぐらい簡単に倒壊します。椎骨動脈がその状態にあるという事です。そして、脳梗塞やくも膜下出血を予防する薬を処方する事ができます。椎骨動脈解離が正常な状態に回復するまでの間、飲み続ける事で効果的に予防できるのです。
後頭部の痛み、首に痛みがある方へ
ここから下は症状がある方向けのご説明です。
下記症状が1つでも当てはまる場合は、椎骨動脈解離の疑いを持ってください。
- 後頭部の頭痛
- 首(うなじ)の痛み
- 左右どちらかの痛み
代表的な症状として上記4つを挙げましたが、いずれか1つでも当てはまれば懸念して良いと考えます。その理由として必ず起こると決まっている症状はないからです。尚、頭痛は多くの方に発生し、痛みは強い傾向にあります。また、患者様によく聞くと一過性脳虚血発作(TIA)を併発している場合があります。TIAとは脳梗塞の症状が短時間発生するものです。
下記に脳梗塞の症状を列記しますので、確認してみてください。
運動障害
身体の左右どちらか片側に力が入らない、食事中に箸や茶碗を落とす、歩いている時に傾くなど
感覚障害
身体の左右どちらか片側の手などがしびれる、感覚が鈍くなるなど
視野障害
物が二重に見える、視野(見える範囲)が狭くなるなど
言語障害
言葉がうまく出ない、呂律が回らないなど
バランス障害
ふらつく、めまいがする、足元がフワフワするなど
このような症状が短時間起きて、すぐに元に戻ったという方は、安心せずに必ず直ぐに受診してください。椎骨動脈解離と脳梗塞の両方が疑われます。TIAは脳梗塞の前兆で、TIAが起こった方のうち15~20%は3カ月以内に脳梗塞が起こります。
どこで診てもらえば良いのか
「MRIがあり、椎骨動脈解離の精査をしてくれるクリニックへ行く」が答えです。ですが、この基準で探すことは難しいと思います。どの程度椎骨動脈解離に理解のある医師で、どのようにMRI撮影を行うかは公開情報ではないからです。
MRI撮影には通常この工程で撮るというルーティーンがあるのですが、患者様が訴える症状によって撮影方法を追加したり変更する必要があります。例えば、椎骨動脈解離疑いなら血管MRA、聴神経腫瘍疑いならCISS法というようにです。しかし、現実は柔軟な対応が出来るクリニックばかりではありません。事実、他院様でMRIを受けた方が当院へ来て、椎骨動脈解離が見つかる事はよくある事例です。
どこで診てもらえば良いかわからない場合は、当院で検査を承ります。当院は横浜市青葉区にある脳神経外科です。最寄り駅は田園都市線藤が丘駅です。検査機器はMRIです。問診票に椎骨動脈解離疑いと書いてくだされば、しっかりと精査させていただきます。
よくある当院へのご質問
Q.検査や診察にどれぐらい時間が掛かりますか?
総所要時間は平均で2時間、混雑時で3時間程度です。状況により変動はありますので、目安としてお考えください。
Q.いくら掛かりますか?
初診+MRI検査で約8,500円です(3割負担の方の場合)。追加検査がある場合は総額で概ね10,000円~15,000円となります。
Q.何回通院する必要がありますか?
当院は1度で診察、MRI撮影、結果説明の全てを行う方針です。よって一回きりのご来院で大丈夫です。※懸念事項があった場合、椎骨動脈解離が見つかった場合は例外です。
Q.貴院が特別高いということはありますか?
ありません。同じ性能のMRI、同じ検査内容なら、どこの病院でも値段は一緒です。
Q.BB法を用いた場合、値段は変わりますか?
変わりません。ご安心ください。
Q.椎骨動脈解離のもっと詳しい解説はありますか?
こちらをご覧ください。
関連性の高いコラム
椎骨動脈解離とは?
記事監修
院長 泉山 仁
・横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 院長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本脳卒中学会専門医
平成27年 市が尾カリヨン病院 病院長
平成29年 青葉さわい病院 副院長
令和元年 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 開業
横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科
田園都市線藤が丘駅より徒歩8分、青葉台駅より徒歩13分
診療:要予約制 診療日:月~木曜日、土曜日
初診でMRI希望の方は事前にお電話にてご予約ください。
当日のご予約も可能です。
電話番号:045-482-3800