MRIの検査リスクとMRIの特徴

MRIは安全性の高い機械として広く認知されています。しかし磁性体(磁石)に関連した事故は起こる可能性があります。その詳細について説明します。

前提:MRIは金属類のチェックをきちんと行えば事故のリスクは極めて低いです。尚、MRIはレントゲンと違い被爆のリスクはありません。検査を行うことで身体に害が発生することはありません。


■MRIのリスク1

MRI装置には常に強い磁場が発生しています。高磁場の装置では装置の外側に逆向きの磁場を作り磁場の漏れを少なくして周辺への悪影響を減らしています。これにより周囲への磁場の影響は少なくなります。

しかし不用意に金属を持ってMRI装置に近づくと、ある地点までは磁場の強さを感じませんが、ある地点から急激に磁場が強まります。磁場を感じた瞬間に装置に引き寄せられ吸着事故になります。ですので、このような事故を起こさぬよう検査室への金属の持ち込みは厳重にチェックを行なっています。


■MRIのリスク2

当院で使用しているMRI装置は1.5テスラ(15000ガウスの強力な磁力)です。もし検査室内に医療用の酸素ボンベを持ち込むと、約10kgの酸素ボンベが500kgの重さに感じられる力でMRI装置に引っ張られます。

2001年、アメリカで子供の検査中に酸素ボンベが持ち込まれ、MRI装置の磁力に引かれた酸素ボンベが小児の頭に激突し脳挫傷で亡くなる事故がありました。

日本でもMRI装置に金属が張り付いて取れなくなった報告はたくさんあがっています。ただ日本では死亡事故の事例はありません。ネックレスやピアスなど金属製のものを付けたまま検査をすると、MRI装置の強力な磁場と電波の影響で金属製のものは加熱され火傷の危険性があります。

そのため検査を行う前に問診や着替え、全身のチェックを行います。火傷や金属物の張り付きを防止するために行っています。


■MRIの特徴(CT検査との比較)

MRIは磁場と電磁波、CTはX線を使用しているため、得られる情報が異なります。CTでは人体組織をX線が通過するときに、その通過量の違いを情報として画像化しているので、単純に腹部を検査しても臓器の形態が分かる程度で病気の描出は困難です。詳細に検査するには造影剤が必要です。

MRIでは体を構成する水素原子核の分子内でのつながり方で出てくる情報が変化する為、臓器の正常組織と病変組織で異なる信号が得られ、画像上に病変組織が現れます。

CTは一回息を止めるだけで全身の情報を得ることが可能で検査時間は検査台への乗り降りや検査中の注射を含めても15分くらいです。MRIは一回の撮像に2~5分前後の時間がかかり、この撮像を3~5種類は必要となります。合計の検査時間は20分から40分、長いときは1時間程度が必要なこともあります。尚、当院で脳の撮影を行う場合は20分程度です。


■体内に挿入物がある方

最近の医療用体内挿入物(ステントやクリップ、プレートなど)は非磁性体のチタンを使用しているためMRI検査では問題になりませんが、実際に検査するときに体内に入っている金属の正体が不明の時は検査することが出来ません。

また金属が入っている可能性があるときも検査が出来ません。アメリカでは溶接作業で目に入った金属粒が原因でMRIによる失明事故の報告があります。他にもカラーコンタクトレンズや刺青の着色料に酸化鉄が入っていると発熱の原因となるので注意が必要です。


■ペースメーカーが入っている方

数年前までMRI検査が出来なかったペースメーカーは現在、MRI対応型があります。対応型であっても様々な制限(撮像範囲や部位、撮像時間、検査開始までの手順)があり煩雑な作業が必要です。これらの制限を守らないと患者さんの生命の危機やペースメーカーの故障の危険性があります。

ペースメーカーが入っている方がMRI検査を希望するときは、ペースメーカーのかかりつけ病院にご相談ください。


■MRI装置の構成

筐体(ガントリ)中央にはボアと呼ばれるトンネルがあり患者さんは中に入って検査を行います。寝台 患者さんを乗せボア内に送り込みます。患者さんが寝ている部分にはアンテナが組み込まれていて患者さんから出てくる信号を受けます。

受信コイル(アンテナ) 患者さんから出てくる信号を受けるため検査部位や用途に合わせて様々な受信コイルが存在します。


■液体ヘリウム

高磁場を作り出す為に超伝導磁石を使用しています。超伝導状態を作りだす為に液体ヘリウム約1500リットルの中に超伝導コイルが入っています。


記事監修
横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 診療放射線技師

 

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