ヒカキンさんが患った難病、副鼻腔炎とは?

 

ヒカキンさんが患った病気は副鼻腔炎です。
細かい分類では好酸球性副鼻腔炎に該当します。好酸球性副鼻腔炎は難病指定されています。

副鼻腔炎とは?

鼻の周りにある副鼻腔に炎症が起こる病気です。

副鼻腔は顔の左右に4個ずつ、合計8個あります。その中には空気が入っていており、小さな穴で鼻腔(鼻の内部)と繋がっています。

副鼻腔炎の主な症状

鼻づまり  鼻水  頭痛
鼻内からの悪臭  嗅覚低下  痰や咳
顔面痛  頬の違和感、圧迫感
頭痛のある副鼻腔炎は、こちらのページで詳しく解説しています。

副鼻腔炎は主に二つ

1.急性副鼻腔炎
風邪等による一過性の副鼻腔炎。概ね4週間以内に治まる

2.慢性副鼻腔炎
3ヵ月以上続く副鼻腔炎。蓄膿症とも呼ばれる。
 
ヒカキンさんは慢性副鼻腔炎でした。ご本人も「以前から鼻が悪かった」と仰っています。

好酸球性副鼻腔炎とは?

鼻にポリープ(=盛り上がった組織)ができる副鼻腔炎です。
腫れた粘膜がキノコのような膨みを多数形成しポリープとなります。鼻ポリープは、鼻茸(はなたけ)とも呼ばれます。

尚、好酸球性副鼻腔炎は難病です。ただし、死に繋がる難病ではありません
好酸球性副鼻腔炎/2015年より難病として認可:難病指定番号306

難病指定されている理由
  1. 現在の医学では根治できないため
  2. 手術で除去しても再発率が高いため
再発率は術後数年で50%程度とされています。ですが、この数値はデータ毎の開きがあり、発症原因によっても大きく異なります。例えば、アスピリン喘息を併発の場合は、ほぼ再発します。

好酸球性副鼻腔炎の症状・原因

主な症状
  • 嗅覚障害(においがわからない)
  • 鼻詰まり、鼻汁
  • 頭痛、頭重感

併発しやすい病気
  • 気管支喘息
  • 中耳炎
  • 難聴
  • 味覚障害

主な原因

  •  原因不明

アスピリン起因、ウイルス性、アレルギー性などの諸説あるが、どれも確定的ではない。何らかの理由で鼻腔内に炎症を起こり、この炎症が慢性化する患者の一部が、好酸球性副鼻腔炎を発症する。

好酸球性副鼻腔炎の患者数

少なくとも3万人、実際には5~10万の患者様がおられる可能性が高いです。これは他サイトの情報と異なるでしょう。

「日本では約2万人が好酸球性副鼻腔炎に罹患しています。」が、よく出回っている情報です。しかし、この数値は中等度・重度の患者数です。そして、実際に認定されている患者数はもっと多いです。

令和5年度時点で、好酸球性副鼻腔炎の受給者証を持つ患者様は28,491人です。
情報参照元:特定医療費(指定難病)受給者証所持者数

この人数は増加傾向にあり、令和元年の時点と比べて約3倍です。よって、少なくとも3万人、実際には5~10万規模での患者様がおられる可能性を示唆しています。

公式な数値は、確定診断を受け申請した方の数です。つまり、実数は確実にそれよりも多いのです。特に軽度の患者様を含むと飛躍的に増えるでしょう。

副鼻腔炎の落とし穴

当院は脳神経外科ですが、副鼻腔炎の患者様を多数見つけています
毎年、100名以上副鼻腔炎が見つけています

実は脳のMRIを撮ると位置の関係上、鼻も一緒に映るのです。これにより、鼻の入口から副鼻腔まで、詰まり具合がバッチリわかります。


そして、ここからが大事なポイントです。

副鼻腔炎が見つかった方のうち、約1/3は自分が鼻が悪いと自覚していません


当院で見つかるパターンは、主に二つです。

  1. 脳の病気が心配で受診して、偶然副鼻腔炎が見つかる
  2. 副鼻腔炎が原因の頭痛で受診して見つかる

副鼻腔炎は頭痛を起こす事があります。部位は前頭部やこめかみです。強い頭痛が多い傾向が見られます。「今までで一番痛い頭痛」と仰る方もいます。

ヒカキンさんの場合、飛行機の着陸時に強烈な頭痛が発生した事で、発覚に至りました。しかし、鼻が原因の頭痛は、局所的に起こるとは限りません

「何もしてないのにずっと頭が痛い。」という症状が出る方が多いです。鼻の上の周辺を押してみて、痛む箇所がある場合は、副鼻腔炎の可能性が一層高まります。

要注意の方

下記に該当する方は、これを機に一度調べてみてください。

  • よく鼻が詰まっている
  • よく鼻声になる
  • 鼻呼吸がしんどい

これらの症状は、自覚のない副鼻腔炎が原因かもしれません

例えば、原因が花粉症とわかっているなら、それは問題ありません。問題は鼻が悪いと自覚していない方々です。

そのような方々の中には「これは鼻の治療しないとマズい…。」という状態の方が沢山おられるのです。

選択肢は二つ

受診先の選択肢は二つあります。

1.耳鼻咽喉科へ行く
最も想定される診療科でしょう。鼻の専門です。しかし、MRIやCTがある耳鼻咽喉科は少ないです。つまり、レントゲンやスコープでの確認となります。

ですが、レントゲンでの副鼻腔炎の鑑別率は約50%です。耳鼻咽喉科へ行った方が、当院で初めて発見に至るケースもあり、確度に関しては、少々思うところがあります。これらを理解して行く必要があります。

2.MRIやCTのあるクリニックへ行く
部位の関係上、最も多く鼻を見ている診療科は脳神経外科です。そして、脳神経外科は場合、多くにMRIかCTが設置されています。そこで脳と鼻を一度に診てもらう事が、確実でお得です。


近年、MRIの保険適用対象に鼻の疾患疑いが追加されました。これにより保険で鼻だけを診てもらう事が可能になりました。しかし、どうせ撮ってもらうなら、脳の疾患疑いをメインで受診する事をお勧めします。理由は一石二鳥になるからです。

本来、MRIで保険を使うには、一度の撮影で一箇所しか撮ることができません。ですが、脳を撮れば鼻も映ります。これは脳と鼻の位置関係上、意図しなくても鼻まで映ってしまいます。

ですから、「脳と鼻を調べたい」が一度で実現できるのです。ただ、クリニックによっては断られる場合があるかもしれません。そういう時は当院を頼ってください。当院では毎週、副鼻腔炎の患者様を見つけています。


以上、副鼻腔炎の解説と、脳神経外科的視点でした。

ヒカキンさんの副鼻腔炎が再発しない事を切に願います。「鼻が通る!睡眠の質が上がった!声がクリアになった!」と喜んでおられているのを見て、心の底から良かったと感じると共に、無事に手術が上手くいって安堵しました。やはり、健康は何よりも大切ですね。

 

記事監修

院長 泉山 仁

・横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 院長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本脳卒中学会専門医

平成27年 市が尾カリヨン病院 病院長
平成29年 青葉さわい病院 副院長
令和元年 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科 開業

 
 
横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科

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